STORY RECORD 04
第四話
拡がる揺らぎ
第四話 拡がる揺らぎ
幻想域の各所で、同時に観測されていた。
同じものが。
記録に属さない断片。
どこにも繋がらない存在。
それが、複数。
「……ひとつじゃない」
譜守ユラは、静かに目を伏せた。
本来、存在は記録によって支えられている。
譜がそれを保ち、崩壊を防ぐ。
だが──
「静譜が、反応しない……」
維持されるべき対象として、認識されていない。
それなのに。
「……残っている」
消えずに、そこにある。
幻想域の外縁。
綴目アオは、手の中の断片を見つめていた。
ひとつだったはずのそれは、
いつの間にか、二つに増えている。
「さっきまで、ひとつだったのに」
記録は増えない。
それが、この世界の前提だった。
「……でも、増えてる」
レイは、それを見ていた。
「集められないものは、流れに乗らない」
「流れに乗らないものは、止まるしかない」
「……でもこれは、止まっていない」
その瞬間。
新たな断片が、静かに現れる。
どこから来たのかは分からない。
ただ、そこにある。
ユラの声が、かすかに沈む。
「……増えている」
存在を支えるものがないまま、
存在だけが増えていく。
それは、
世界の構造そのものの歪みだった。
揺らぎは、ひとつではなかった。