STORY RECORD 15

第十五話

流入する記録

第十五話 流入する記録

幻想域 外縁。

静寂が、崩れた。

音ではない。

だが確かに、

“何か”が流れ込んでくる。

アオが顔を上げる。

「……なに」

空気が、ざらつく。

違う。

これは——

記録。

だが、幻想域のものではない。

言葉が、浮かぶ。

形を持った“文章”。

「この世は——理不尽だ」

アオの瞳が揺れる。

「……これ」

続く。

「でも、そんなに辛くなくていい」

断片ではない。

繋がりを持った記録。

完全な意味を持つ言葉。

レイが低く言う。

「……外からだ」

さらに流れ込む。

「“今”に、注力すればいい」

その瞬間。

空間が、わずかに安定する。

アオの呼吸が止まる。

「……え」

歪んでいた構造が、

ほんのわずかに整う。

ユラの視線が鋭くなる。

「……干渉している」

レイが言う。

「記録が、流れを持ってる」

アオが呟く。

「……この言葉」

「繋がってる」

ユラは短く言う。

「触れるな」

だが——

アオの指が、わずかに動く。

目の前にあるのは、

誰かが選んだ言葉。

誰かの記録。

「……これなら」

触れる。

その瞬間。

言葉が、揺れる。

「理不尽だ」

「でも——」

重なる。

歪む。

増える。

レイが叫ぶ。

「やめろ!」

遅い。

外の記録と、

幻想域の断片が——

混ざる。

その結果。

“形”が、生まれる。

アオの瞳が見開く。

「……また」

ユラが静かに言う。

「だから、言った」

一拍。

「触れるな」

沈黙。

新しく生まれたそれは——

どこか、

“優しかった”。

だが同時に、

明らかに、

元とは違っていた。

幻想域のどこかで、

別の記録が、

さらに流れ込み始めていた。